マンション総会の議案書の書き方とひな形
公開日: 2026-07-01 / 更新日: 2026-07-28
総会当日、区分所有者は議案書を読んで賛否を判断します。議案書の書き方が分かりにくいと、質疑が要点からずれて長引いたり、内容を正しく理解されないまま否決されたりすることもあります。この記事では、議案書に必要な要素・議案の種類別の書き方・ひな形・よくあるNG例までまとめて解説します。
議案書に必要な3つの要素
議案書は、次の3要素で構成するのが基本です。
- 提案理由 — なぜこの議案が必要になったのか、背景と課題を説明します。「なんとなく古いから」ではなく、点検結果や苦情の件数など、根拠となる事実を添えると説得力が増します。
- 議案の内容 — 何を決議してほしいのかを、金額・仕様・実施時期まで具体的に書きます。曖昧な表現のまま採決すると、後になって「そんなつもりではなかった」というトラブルにつながります。
- 採決方法 — 普通決議か特別決議か、決議に必要な賛成割合の目安を明記します。規約変更を伴う議案は特別決議が必要になる場合があり、記載漏れがあると後日「本当に有効な決議か」を問われかねません。
この3つが揃っていないと、区分所有者は「結局何を決めるのか」を判断しづらくなります。逆に言えば、この3つさえ押さえておけば、初めて議案書を作る理事でも大きく外すことはありません。
議案の種類別に書き方が変わるポイント
議案の種類によって、区分所有者が気にするポイントは異なります。想定される質問もあわせて押さえておくと、当日の質疑がスムーズになります。
| 議案の種類 | 書くときのポイント | 想定される質問 |
|---|---|---|
| 収支決算・収支予算案 | 前期との増減理由、繰越金の使途を明記 | 「なぜ支出が増えたのか」「積立金は足りているか」 |
| 役員(理事)選任 | 候補者の住戸番号・簡単な自己紹介を添える | 「立候補者はいるか」「任期は何年か」 |
| 管理規約・使用細則の改正 | 新旧対照表で変更箇所を明示する | 「何がどう変わるのか」「決議要件を満たすか」 |
| 大規模修繕工事の実施 | 工事範囲・見積もり根拠・工期を具体的に書く | 「相見積もりは取ったか」「なぜこの業者か」 |
| 駐車場・使用細則の変更 | 変更後の運用イメージと経過措置の有無を書く | 「既存利用者への影響は」「いつから適用か」 |
特に規約改正は、新旧対照表を添えるだけで理解度が大きく変わります。決議要件の考え方そのものは「マンション総会の定足数・議決権割合・特別決議の要件とは」で解説しています。
作成から配布までの基本フロー
議案書は、思いついた順に書き始めると要素の抜け漏れが起きがちです。次の4ステップで進めると、抜け漏れを防ぎながら効率よく作成できます。
議案書のひな形
第○号議案 ○○○○の件 【提案理由】 (なぜこの議案が必要になったか、背景・課題を記載) 例)給水管の経年劣化により漏水リスクが高まっているため、 更新工事を実施したい。 【議案の内容】 (何を、いつ、いくらで実施するかを具体的に記載) ・工事内容:____________ ・実施時期:○○年○月〜○月(予定) ・費用 :○○円(修繕積立金より充当) ・施工業者:____________(相見積もり○社より選定) 【採決方法】 本議案は(普通決議/特別決議)とし、出席区分所有者の 議決権の(過半数/4分の3以上)の賛成をもって可決とします。 以上、ご審議のうえご承認くださいますようお願い申し上げます。
提案理由・議案内容を書くときのチェックリスト
ひな形の空欄を埋めるときは、次の点を確認すると記載漏れを防げます。
- 背景・課題は「事実」で書けているか(感想ではなく点検結果・苦情件数など)
- 金額には根拠(相見積もりの社数・選定理由)を添えているか
- 実施時期は「予定」であることが分かる書き方になっているか
- 採決方法(普通決議/特別決議)と、必要な賛成割合を明記しているか
よくあるNG例とOK例
議案書の書き方で担当者が迷いやすいポイントを、NG例とOK例で比較します。
NG例:「給水管が古くなってきたので、更新工事を行いたい。」
OK例:「築18年が経過し、昨年度の配管劣化診断で腐食率が基準値を超えたことが確認された。今後も漏水事故のリスクが高まるため、更新工事を実施したい(診断結果は書庫の点検報告書を参照)。」
NG例は「古い」という主観的な印象だけで、区分所有者が緊急性を判断できません。OK例は、診断結果という客観的な事実と、参照できる資料の場所まで示しているため、質疑の場で「本当に必要なのか」と聞かれても、その場で根拠を示せます。
議案書を分かりやすくするコツ
- 複数社の見積もりを比較して添付する — 特に費用を伴う議案は、金額の妥当性を示すと質疑が減ります。
- 図や写真を添える — 工事範囲や劣化状況は、文章より写真の方が伝わります。
- 想定質問へのQ&Aを添える — 「なぜ今のタイミングなのか」「他の選択肢は検討したか」といった、想定される質問への回答をあらかじめ用意しておくと、当日の審議がスムーズになります。
- 専門家の意見を添える — 大規模修繕や規約改正など専門性の高い議案は、管理会社やマンション管理士の見解を一言添えるだけで、区分所有者の安心感が増します。
議案書の事前配布や、当日の審議・採決の進め方は「マンション総会の案内・議事録共有をスムーズにする方法」を、決議結果の記録方法は「マンション理事会・総会の議事録の書き方」をあわせてご覧ください。
議案書のよくある失敗ケース
実際の総会運営でよく見られる、議案書にまつわる失敗パターンを紹介します。あらかじめ知っておくと、同じ失敗を避けやすくなります。
- 直前に議案の内容が変わり、配布済みの議案書と内容がずれる — 招集通知発送後に金額や仕様が変わった場合は、訂正版を早めに再配布し、変更点が分かるように明記します。
- 関連性の低い複数の議案を1枚にまとめて論点が分かりにくくなる — 同じ工事に関するものでも、決議の種類が異なる場合などは議案ごとに分けて番号を振ると採決が明確になります。
- 専門用語だけで説明し、質疑が用語の確認に費やされる — 「大規模修繕」「特別決議」など専門用語には、一言補足を添えるだけで当日の理解度が上がります。
議案書作成の負担を減らす工夫
議案書の質を保ちながら、担当者の負担を減らす工夫もあわせて紹介します。
- 議案ごとに担当理事を決める — 一人がすべての議案書を抱えると準備が総会直前にずれ込みがちです。議案ごとに下書き担当を分担すると、余裕を持って準備できます。
- 前回・前々回の議案書を土台にする — 収支決算・予算案など毎年ほぼ同じ構成の議案は、過去の議案書をコピーして数字を差し替えるだけで大幅に時短できます。
- クラウドで下書きを共有する — 理事会メンバーがオンラインで下書きを確認・修正できるようにしておくと、印刷して回覧する手間や、修正のたびの再配布を減らせます。
- Web総会・オンライン開催に切り替える — 総会そのものをオンラインで開催すれば、議案書の事前共有から質疑応答までを画面上で完結でき、印刷・郵送の手間も減らせます。規約上の要件や進め方は「マンションでWEB総会・オンライン理事会を開く方法|規約と電磁的方法の実務」で解説しています。
よくある質問
議案書は総会の何日前までに配布すればよいですか?
招集通知に議案書を同封する場合、通知そのものの発送期限(管理規約の定めによる)に合わせて準備します。招集手続き自体の流れは「マンション総会の案内・議事録共有をスムーズにする方法」を参照してください。
議案書はA4何枚くらいが目安ですか?
議案の内容によりますが、1議案あたりA4半分〜1枚程度にまとまる分量が目安です。見積書や図面など添付資料が多い議案は、別紙として分けると本体が読みやすくなります。
議案書の作成は理事長が一人で行うべきですか?
理事長一人で抱える必要はありません。管理会社のフロント担当が下書きを作成し、理事会で内容を確認・修正するケースも多くあります。ただし最終的な内容の責任は理事会にあるため、数字や根拠は必ず自分たちの目で確認しましょう。
採決方法の記載を間違えるとどうなりますか?
普通決議で足りる議案を特別決議として案内してしまった場合など、記載内容と実際の決議要件が食い違うと、後日「本当に有効な決議か」を問われる可能性があります。決議要件の基本的な考え方は「マンション総会の定足数・議決権割合・特別決議の要件とは」で確認しておくと安心です。
反対意見が予想される議案は、書き方を変えるべきですか?
反対が予想される議案ほど、提案理由の根拠と、他の選択肢を検討した経緯を丁寧に書くことが有効です。「なぜこの方法を選んだのか」を先回りして説明しておくと、当日の質疑が建設的な議論になりやすくなります。
総会当日に修正動議が出た場合、議案書の記載とズレが生じませんか?
当日に修正動議が出された場合は、原案とは別に「修正案」として審議し、議事録に原案・修正案それぞれの結果を記録するのが一般的です。議案書自体をその場で書き換える必要はありませんが、決議結果の記載方法は「マンション理事会・総会の議事録の書き方」を参考にしてください。
関連する複数の議案を1つの議案書にまとめてもよいですか?
まとめると準備の手間は減りますが、区分所有者が個別に賛否を判断しにくくなり、一部だけ反対したい人が困ることがあります。決議要件が異なる議案(普通決議と特別決議が混在する場合など)は、特に分けて番号を振ることをおすすめします。
まとめ
議案書は、提案理由・議案の内容・採決方法の3要素を、具体的な数字と根拠つきで書くのが基本です。議案の種類ごとに想定される質問を押さえ、見積もりの比較や図解、想定Q&Aを添えることで、区分所有者が判断しやすい議案書になり、総会当日の審議もスムーズになります。
議案書だけでなく総会全体の準備を効率化したい場合は「マンション総会当日の流れと進め方」もあわせて参考にしてください。
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