マンションでWEB総会・オンライン理事会を開く方法|規約と電磁的方法の実務
公開日: 2026-07-10 / 更新日: 2026-09-30
「総会に人が集まらない」「共働き・高齢化で出席率が下がっている」――そんな課題の解決策として、WEB総会(オンライン総会)・オンライン理事会への関心が高まっています。国土交通省も標準管理規約の改正でIT活用のルールを明確化しており、制度面の後押しがあります。
この記事では、マンションでWEB総会・オンライン理事会を開くための考え方と実務を解説します。
※本記事は執筆時点(2026年)の一般的な情報です。総会の要件は法令・各組合の規約により異なります。実施にあたっては規約と国土交通省の最新資料をご確認ください。
WEB総会・オンライン理事会のメリット
- 移動の負担がない — 集会室まで行く必要がなく、自宅から参加できます。
- 参加率が上がる — 仕事帰りの時間帯や育児中でも参加しやすくなり、欠席が減ります。
- 遠方の区分所有者・理事も参加できる — 単身赴任や実家介護などで現地にいない方も、リモートから出席できます。
- 記録が残しやすい — 録画機能を使えば、議事録作成時の確認資料になります(録画の要否や保存方法は、個人情報保護の観点から事前に組合内で決めておきます)。
- 理事のなり手不足対策になる — 参加のハードルが下がることで、「忙しくて理事会に出られないから引き受けられない」という辞退理由を減らせます。
制度の後押し:令和3年改正でIT活用が明確化
国土交通省は令和3年(2021年)6月22日の標準管理規約改正で、ITを活用した総会・理事会のルールを明確化しました。WEB会議システム等を用いた総会・理事会が可能であることが示され、オンライン運営を進めやすくなっています(背景は「マンション標準管理規約とは|改正ポイント」)。
ただし、実際に自分のマンションでWEB総会を開くには、自組合の管理規約がIT総会に対応していることが前提になります。まずは規約の確認から始めます。
WEB総会の3つの形態
WEB総会と一口に言っても、実務では次のような形があります。
- ハイブリッド型(会場+オンライン併用):会場開催を基本としつつ、遠隔の区分所有者はオンラインで参加。もっとも現実的で、高齢者にも配慮できる形です。
- 完全オンライン型:会場を設けず全員オンライン。通信環境・本人確認の設計が重要になります。
- リアルタイム視聴型:総会の様子を配信し、議決自体は書面・電磁的方法で行う。
いきなり完全オンラインにせず、ハイブリッド型から始めるのが安全です。
対面・オンライン・ハイブリッドの比較(理事会の場合)
理事会も総会と同様、対面だけでなくオンライン・ハイブリッド(併用)という選択肢があります。それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 対面開催 | オンライン開催 | ハイブリッド開催 |
|---|---|---|---|
| 参加のしやすさ | 移動が必要 | 自宅から参加可 | 両方から選択可 |
| 必要な準備 | 集会室の確保 | Web会議ツール・接続確認 | 会場設営+配信機材 |
| ITに不慣れな理事への配慮 | 不要 | 事前の接続テストが必須 | 会場参加を選べる |
| 向いているケース | 全員が参加しやすい立地 | 単身赴任・育児中の理事が多い | 参加スタイルが理事ごとに異なる |
ハイブリッド開催は、参加のしやすさとITへの配慮を両立できる一方、司会役が会場参加者とオンライン参加者の両方に目を配る必要があり、進行の難易度は上がります。まずは理事会など少人数の会議でオンライン開催に慣れ、総会は当面ハイブリッド型で運用するという段階的な進め方も現実的です。
進め方のコツとよくある失敗
進め方の基本は対面と同じですが、いくつか工夫が必要です。
- 議題ごとに時間配分を決めておく — 対面より発言のタイミングを取りにくいため、司会役が議題ごとに区切って進行します。
- 発言者を明確にする — 発言前に名乗る、挙手機能を使うなど、誰が話しているか分かるようにします。
- 決議の取り方を決めておく — 挙手や投票機能、あるいはチャットでの意思表示など、決を採る方法を事前に決めておきます。
初めてオンラインで会議を開く際に起きやすい失敗を、NG例とOK例で比較します。
NG例:「初回のオンライン理事会で、資料を画面共有しながら口頭だけで説明を進めたところ、通信の遅延で聞き取れなかった理事が質問できないまま議事が進んでしまった。」
OK例:「議題資料は前日までにクラウドで配布し、当日は要点だけを画面共有で説明。聞き取れない場合は遠慮なくチャットで知らせてもらうルールを冒頭で共有しておいたことで、質問の取りこぼしがなかった。」
WEB総会・オンライン理事会を開くための準備
① 管理規約でIT総会を可能にしておく
規約にIT総会・電磁的方法の規定がない場合は、標準管理規約に沿って規約を整備します(規約変更は総会の特別決議が必要)。
② 通信環境・システムの用意
- WEB会議システム(Zoom等)
- 招集通知・議案書・資料を事前に配布・閲覧できる仕組み(掲示板・クラウド)
- 当日の音声・映像トラブルへの備え
③ 本人確認・議決権行使の方法を決める
WEB総会でとくに重要なのが議決権の扱いです。一般に次を組み合わせます。
- 当日オンライン出席による議決権行使
- 委任状による代理出席
- 書面または電磁的方法(メール・Web上のフォーム等)による議決権行使(事前)
電磁的方法による招集通知・議決権行使をどこまで認めるかは、規約の定めによります。事前の書面・電磁的行使を併用すると、当日の通信トラブルがあっても定足数を確保しやすくなります。
高齢者・IT不慣れな方への配慮
WEB総会の普及で最大の壁は、高齢の区分所有者への配慮です。
- 会場も残すハイブリッド型にする
- 書面での議決権行使を必ず併用する
- カメラをオンにできない事情がある場合は、電話やビデオなしの音声のみでの参加も認める
- 接続方法を事前に紙の手順書(画面のスクリーンショット付き)で案内し、必要なら接続テストを行う
「オンラインについていけない人を置き去りにしない」設計が、合意形成の鍵です。
録画データの取り扱いに関する注意点
WEB総会・オンライン理事会は録画機能を使えるのが利点の一つですが、録画データには発言者の映像・音声という個人情報が含まれます。安易に長期間保存したり、理事・組合員以外に共有したりすると、プライバシーの観点からトラブルになりかねません。録画を行う場合は、次の点をあらかじめ決めておくと安心です。
- 録画の目的を限定する — 議事録作成時の確認用など、目的を明確にしておきます。
- 保存期間を決める — 議事録が確定し、内容の確認が済んだ時点で削除するなど、いつまでも残さないルールにします。
- 録画の開始前に出席者へ伝える — 事前に一言伝えておくことで、後々のトラブルを防げます。
電子掲示板が土台になる
WEB総会・オンライン理事会をスムーズに進めるには、招集通知・議案書・資料の配布、出欠・委任状の受付をオンラインで一元化できる基盤があると便利です。紙とオンラインが混在すると、かえって手間が増えます。
- 招集通知・総会の連絡をオンラインで配信
- 議案書・資料をいつでも閲覧できる場所に保管
- 出欠・委任の状況を可視化
- 日常の理事会DX・連絡のデジタル化と一体で運用
よくある質問
Web会議ツールは何を使えばよいですか?
特定のツールを規約で指定する必要はありません。理事・組合員の年齢層やITスキルに合わせて、操作がシンプルで参加リンクをクリックするだけで入れるツールを一つ選び、毎回同じものに統一するのがポイントです。
通信トラブルが起きた場合はどうすればよいですか?
一部の出席者が接続できない、または途中で切断された場合は、録画や議事録案を後日共有し、疑問点があれば個別に確認してもらう運用が一般的です。トラブルが起きた事実と対応も議事録に残しておくと、後日の確認がスムーズです。
規約にオンライン開催の定めがない場合はどうすればよいですか?
規約に明記がなくても、理事会レベルでは運用として試験的に導入している組合もあります。ただし総会については、将来的なトラブルを避けるため、令和3年改正の標準管理規約に沿って規約に明文化しておくことが望ましいとされています。
費用はどのくらいかかりますか?
Web会議ツールの多くは、理事会程度の人数・時間であれば無料プランでも運用できます。参加者側もパソコンやスマートフォンとインターネット環境があれば追加費用なく参加できるため、対面開催の会場費や資料の印刷・郵送費と比べてコストを抑えられるケースが多いです。一方、有料プランでないと録画機能や通話時間に制限がかかるツールもあるため、実際に使う機能を確認したうえで選ぶことをおすすめします。
理事・組合員全員がオンラインに慣れていない場合でも導入できますか?
いきなり全員をオンラインに切り替える必要はありません。まずは理事会など少人数の会議や、出席が難しい方だけをオンラインでつなぐハイブリッド開催から試し、少しずつ慣れてもらうという段階的な導入も現実的な選択肢です。
採決の記録はどう残せばよいですか?
挙手機能や投票機能を使った場合はその結果画面のスクリーンショット、チャットでの意思表示の場合はログを保存し、議事録に賛成・反対の数を明記します。議事録の記載項目全般は「マンション議事録の書き方」を参照してください。
まとめ
- 令和3年改正でIT総会・理事会が明確化。ただし実施は自組合の規約整備が前提
- まずはハイブリッド型から。会場と書面行使を残す
- 本人確認・議決権行使の方法を規約に沿って設計する
- 録画データを扱う場合は目的・保存期間を事前に決めておく
- 高齢者を置き去りにしない配慮が合意形成の鍵
- 招集・資料・出欠をオンラインで一元化するとスムーズ
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