Share-Board ‹ トップページ無料で始める
お役立ち記事

マンション管理組合の役員報酬|相場・税金・源泉徴収・確定申告の実務

公開日: 2026-07-19 / 更新日: 2026-07-19

「理事のなり手がいないので、報酬を出して負担に報いたい」——多くの管理組合が一度は検討するテーマです。しかし実際に導入しようとすると、「いくらが妥当なのか」「税金はどうなるのか」「源泉徴収は必要なのか」「公務員の区分所有者は受け取れるのか」といった疑問が次々に出てきます。この記事では、一次情報で確認できる事実と、確認できない事実を明確に区別して整理します。

※本記事は執筆時点(2026年)の一般的な情報です。税務の取扱いは個別事情により異なります。実際の導入にあたっては、管理規約と所轄税務署への確認をお願いします。

そもそも役員に報酬を払ってよいのか

結論から言えば、払えます。 国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」がこれを明記しています。令和7年改正版の第37条(役員の誠実義務等)第2項は、次のとおりです。

役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。

——マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)令和7年改正版 第37条第2項

ここで重要なのは「別に定めるところにより」という文言です。標準管理規約は「報酬を払ってよい」と言っているだけで、金額も算定方法も定めていません。実際に支払うには、自分の管理組合で細則を作る必要があります。

なお、標準管理規約はあくまで国が示すひな形です。自分のマンションの規約に同趣旨の条項があるかを必ず確認してください(規約そのものの位置づけは「マンション標準管理規約とは」で解説しています)。

役員報酬の相場:公的な統計は存在しない

検索では「役員報酬 相場」が多く調べられていますが、正直にお伝えすると、信頼できる公的な相場統計は確認できませんでした。

国土交通省の「マンション総合調査」は管理組合運営の実態を幅広く調査していますが、役員報酬の金額水準を集計した公表データは見当たりません。インターネット上には具体的な金額を挙げる記事が多くありますが、出典が明示されていないものが大半です。他組合の金額を根拠に自組合の報酬を決めると、後で「なぜこの額なのか」を総会で説明できなくなります。

相場ではなく「積算」で決める

相場データがない以上、自組合の実態から積み上げるのが唯一の合理的な方法です。

決め方考え方向いているケース
役職別の定額制理事長・副理事長・理事・監事で段階をつける役職ごとの負担差が明確な組合
出席回数連動理事会1回あたり◯◯円出席率にばらつきがある組合
定額+出席加算基本額に出席分を上乗せ責任と稼働の両方に報いたい組合
実費弁償のみ報酬は出さず交通費・通信費等の実費だけ報酬導入の合意が得られない組合
役員報酬 導入の判断フロー。実費弁償のみ・役職別定額制・定額+出席加算・出席回数連動の4方式から自組合に合うものを選ぶ図
報酬を出すと決めた場合の、支払い方式の選び方

金額を決める際は、理事長と一般理事の負担差を必ず考慮してください。理事長は管理会社との折衝、書類への押印、緊急時対応まで担い、他の役員とは稼働量が大きく異なります(具体的な業務範囲は「マンション理事長の仕事」を参照)。

「実費弁償」から始める選択肢

報酬の導入に抵抗がある組合では、まず実費弁償だけを制度化する方法があります。

これらは「報酬」ではなく経費の精算なので、税務上の論点がほぼ発生せず、合意も得やすいのが利点です。標準管理規約第37条第2項も「必要経費の支払報酬」と両方を並べています。

税務の取扱い:ここが最も誤解が多い

役員報酬を導入するとき、実務上いちばん問題になるのが税金です。ここは確定している部分と、していない部分があります。

確定していること:管理組合には源泉徴収義務があり得る

国税庁のタックスアンサー「No.2502 源泉徴収義務者とは」には、次の記載があります。

源泉徴収義務者となる者は、会社や個人だけではありません。給与などの支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども源泉徴収義務者になります

——国税庁 No.2502 源泉徴収義務者とは

法人化していない管理組合は、税務上「人格のない社団等」として扱われるのが一般的です。したがって、支払う報酬が給与所得に該当する場合、管理組合には源泉徴収と納付の義務が生じます。「任意団体だから関係ない」という理解は誤りです。ここは押さえておく必要があります。

確定していないこと:所得区分(給与所得か雑所得か)

一方で、管理組合が役員に支払う報酬がどの所得区分にあたるかについて、国税庁の統一見解は確認できませんでした。実務では次の2つの見方が並存しています。

見方根拠となる考え方帰結
給与所得管理組合と役員の間に指揮監督関係があり、定期的・定額の支払いがある管理組合に源泉徴収義務。役員は年末調整または確定申告
雑所得役員と管理組合の関係は雇用ではなく民法上の委任である源泉徴収の要否が変わり、役員側の申告方法も変わる
所得区分の分かれ方。給与所得と雑所得の判定要素と帰結を対比した図
役員報酬がどちらの所得区分になるかは、支払いの実態で判断が分かれる

どちらになるかは、支払いの実態によって判断が分かれます。 定期同額で支払うのか、出席1回ごとの謝礼なのか、金額はいくらか——といった条件で結論が変わり得ます。

実務での対応:導入前に税務署へ確認する

この論点は、記事や解説サイトの情報だけで判断すべきではありません。制度を作る前に、所轄の税務署に具体的な支払い方法を示して確認するのが確実です。確認の際は、次を整理して持参・照会するとスムーズです。

  1. 支払いの名目(報酬か、実費弁償か、謝礼か)
  2. 支払いの頻度と金額(月額定額か、出席1回ごとか)
  3. 支払い対象者の範囲(役員全員か、理事長のみか)
  4. 管理組合が法人化しているかどうか

導入後に「源泉徴収していなかった」と判明すると、遡って納付を求められる可能性があります。先に確認しておくコストの方がはるかに小さいと考えてください。

役員側の確定申告

報酬を受け取る役員の側でも、申告が必要になる場合があります。一般に、給与所得者が給与以外の所得を年20万円超得た場合は確定申告が必要とされています。役員報酬が少額であればこの基準に達しないことが多いものの、次の点に注意が必要です。

管理組合としては、支払額が分かる書面を役員に交付しておくと親切です。金額を把握できなければ、役員は正しく申告できません。

公務員は役員報酬を受け取れるか

「公務員なので報酬を受け取れないのでは」という相談はよくあります。国家公務員の兼業は国家公務員法第104条および人事院規則14-8で規制されていますが、これらが主に対象とするのは営利企業の役員等との兼業です。マンション管理組合は営利を目的とする団体ではないため、一般に営利企業兼業の規制が直接及ぶものではないと考えられます。

ただし、最終的な可否は所属先の服務規程によります。 地方公務員は自治体ごとに規定が異なり、届出を求められる場合もあります。管理組合としてできる現実的な対応は次のとおりです。

受け取れない人がいることを理由に制度自体を見送る必要はありません。辞退の選択肢を用意すれば足ります。

細則の作り方:総会決議までの手順

役員報酬を実際に導入する流れは次のとおりです。

総会決議までの4ステップ。負担の可視化、細則の案を作る、総会に諮る、輪番制との整合を取る、の流れを示す図
役員報酬を導入する4つのステップ

ステップ1:現状の負担を可視化する

いきなり金額の話をすると「お金目当てか」という反発が出ます。まず、役員が実際に何時間使っているかを示すところから始めます。

なり手不足に悩む組合ほど、この可視化が効果を持ちます(背景は「マンション理事のなり手不足」を参照)。

ステップ2:細則の案を作る

細則に最低限盛り込む項目です。

項目記載内容の例
対象者理事および監事
金額役職別の月額または理事会1回あたりの額
支払時期年1回、任期終了後にまとめて等
支払方法口座振込・現金
欠席時の扱い出席回数に応じて減額するか
辞退本人の申し出により辞退できる旨
実費弁償報酬とは別に交通費等を支給するか
税務上の取扱い源泉徴収の有無(税務署への確認結果を反映)

「欠席時の扱い」と「辞退」は、後から必ず問題になるので最初から書いておきます。

ステップ3:総会に諮る

役員報酬は組合員全員の負担で支払うものなので、総会決議が必要です。議案書には次を明記します。

1戸あたり月額換算の計算例。年間総額21万円を総戸数50戸・12ヶ月で割ると1戸あたり月額約350円になる計算過程を示す図
1戸あたりの負担額は、年間総額÷総戸数÷12ヶ月で計算する

1戸あたりいくらの負担になるかを示すことが、賛同を得るうえで最も重要です。総額だけを示すと大きく見え、否決されやすくなります。

ステップ4:輪番制との整合を取る

輪番制を採っている組合では、報酬制度と輪番のルールが噛み合っているかを確認します。順番が回ってきた人だけが報酬を受け取る形になるため、長期的には全員に回るという説明ができる状態にしておくと納得を得やすくなります(「管理組合役員の輪番制の決め方」も参照)。

報酬を出しても、なり手不足は解決しないことがある

最後に、実務上の重要な注意点です。報酬を導入しても、なり手不足が解消しない組合は少なくありません。理由は単純で、多くの人が避けたいのは「金銭的な無報酬」ではなく「時間的・精神的な負担」だからです。

これらは報酬では解決しません。役員の辞退が続く場合は、報酬よりも先に負担そのものを減らす方が効果的なこともあります(辞退への向き合い方は「マンション理事の断り方と組合側の対応」で扱っています)。

負担を減らす具体策

報酬制度と負担軽減はどちらか一方ではなく、両輪で考えるのが現実的です。

まとめ

論点結論
報酬を払えるか払える。標準管理規約第37条第2項が根拠。ただし細則が必要
相場公的な統計は確認できない。相場ではなく自組合の実態から積算する
源泉徴収給与所得に該当する場合、管理組合に義務が生じ得る(国税庁 No.2502)
所得区分国税庁の統一見解は確認できない。支払いの実態で判断が分かれる
実務対応導入前に所轄税務署へ確認するのが確実
公務員一般に営利企業兼業の規制の直接の対象ではないが、所属先の服務規程による。辞退できる仕組みを用意する

役員報酬は、金額そのものより「決め方と説明のしかた」で成否が分かれます。出典のない相場に合わせるのではなく、自組合の負担実態を可視化し、税務の取扱いを事前に固めたうえで総会に諮ってください。

Share-Board は、マンションの掲示・回覧・書庫をスマートフォンに集約するクラウドサービスです。理事会資料の共有や居住者への一斉連絡をデジタル化することで、役員の作業時間そのものを減らせます。無料プランからお試しいただけます。

Share-Board を無料で試す »