管理組合役員の輪番の決め方と運用のコツ
公開日: 2026-07-01 / 更新日: 2026-07-28
多くのマンション管理組合では、理事などの役員を「輪番制」で選んでいます。立候補に頼らず住戸単位で順番に回すため、公平で決めやすい方式ですが、輪番表の作り方や運用ルールが曖昧だと、不公平感やトラブルの元になります。この記事では、輪番制の決め方と、うまく運用するためのコツを解説します。
役員の選び方には3つの方式がある
マンション管理組合が理事などの役員を選ぶ方式は、大きく分けて3つあります。
| 輪番制 | 立候補制 | 抽選制 | |
|---|---|---|---|
| 決め方 | 住戸順に自動的に回す | やりたい人が手を挙げる | くじ引きで選ぶ |
| 公平性 | 高い(いつかは全員が対象) | 意欲のある人に偏りやすい | 結果は公平だが納得感は場合による |
| なり手不足への強さ | 強い(決まらない事態が起きにくい) | 弱い(立候補が出ないと決まらない) | 中程度 |
| 向き不向きへの配慮 | 配慮しにくい | 意欲・適性のある人が担いやすい | 配慮しにくい |
多くのマンションが輪番制を基本としつつ、立候補があれば優先するなど、複数の方式を組み合わせて運用しています。立候補制や抽選制のみに頼ると、「誰も手を挙げず役員が決まらない」という事態に陥りやすく、結果として一部の熱心な区分所有者に負担が集中してしまうことも少なくありません。輪番制はこうした偏りを避けやすい仕組みとして、多くの管理組合で採用されています。
輪番制のメリットと注意点
輪番制を導入・継続するかどうかを判断するうえでは、メリットと注意点の両方を理解しておくことが大切です。
- 公平性が高い — くじ引きや立候補と違い、「いつかは全員が回ってくる」ため納得感を得やすい方式です。特定の住戸だけが繰り返し役員を担う、あるいは全く担わないという不公平が生じにくくなります。
- 押し付け合いを避けられる — 立候補待ちで役員が決まらない事態を防げます。順番が明確であれば、「次は誰の番か」を巡る調整の手間も減ります。
- 負担感の差には注意 — 意欲やスキルに関係なく選ばれるため、向き不向きのある人には負担が重く感じられることがあります。輪番と合わせて、役員の業務負担そのものを軽くする工夫も必要です。理事会運営の効率化については「マンションフロント業務の効率化」も参考になります。
輪番表を作るときの決め方
輪番表を作る際は、次の点をあらかじめ決めておきます。
- 順番の単位 — 住戸番号順、部屋番号順など、分かりやすい基準を一つ選びます。
- 対象範囲 — 賃貸に出している住戸のオーナーを対象にするか、規約で明確にします。区分所有者本人が対象になるのが基本です。
- 任期と人数 — 管理組合の規模に合わせて、理事の人数と任期(1年・2年など)を決めます。
- 一巡後の扱い — 全戸が一巡したあと、再度同じ順で回すのか、一定期間は免除するのかを決めておきます。
輪番表フォーマットの例
輪番表は、住戸番号・氏名・順番・対象年度を一覧にした表形式で管理するのが基本です。
| 順番 | 住戸番号 | 対象年度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 101号室 | 2026年度 | 就任済み |
| 2 | 102号室 | 2027年度 | 次期予定 |
| 3 | 103号室 | 2028年度 | - |
紙の一覧表でも運用はできますが、住戸の売買や賃貸への切り替えがあるたびに手作業で更新するのは手間がかかります。デジタルで管理していれば、更新のたびに全戸へ再配布する必要もなく、常に最新の状態を共有できます。また、輪番表を全戸に公開しておくことで、「いつ自分の番が回ってくるか」を各住戸があらかじめ把握でき、突然の就任連絡に戸惑うことも減らせます。掲示板やお知らせ機能を使えば、次年度の輪番対象者への事前案内も一斉に行えます。
辞退・免除ルールを整備する
輪番で選ばれても、事情により引き受けられない住戸は出てきます。
- 正当な理由の基準を明文化する — 高齢、単身赴任、病気療養などの理由を規約や細則に定めておくと、判断がぶれません。
- 免除の代替措置を用意する — 免除の代わりに役員負担金を設定する管理組合もあります。
- 曖昧な運用は不満のもと — 基準がないまま個別対応を重ねると、「あの人だけ免除されている」という不公平感につながります。
個別の辞退の申し出への対応や、角の立たない伝え方については「マンションの理事を断りたいとき — 辞退の可否と伝え方」で詳しく解説しています。免除の代替措置として役員負担金を設定する場合は、金額の妥当性や、免除された住戸と役員を担った住戸との間で不公平感が生じないよう、総会での合意を得たうえで規約や細則に明記しておくことが望ましいです。負担金の水準に決まった相場はありませんが、役員1期あたりの実務負担を目安に、理事会で検討して決めるのが一般的です。
輪番制運用でよくあるトラブルと対策
輪番制の運用でつまずきやすいポイントを、NG例とOK例で比較します。
- 順番の人が突然辞退する — 次点への繰り上げルールを事前に決めておくと、その場で慌てずに対応できます。
- 引き継ぎが口頭だけで新任理事が困る — 過去の議事録や資料をクラウドの書庫に保管しておけば、新任者でも経緯をたどれます(詳しくは「マンション理事のなり手不足を減らす理事会運営の工夫」も参考になります)。
- 輪番表や連絡先の更新が滞る — 紙の名簿での管理は更新漏れが起きやすいため、デジタルでの一元管理に切り替えると手間が減ります。
NG例:「輪番で選ばれたAさんが直前に体調を崩し辞退を申し出たが、繰り上げのルールがなく、理事会が急遽次点を探すのに数週間を要した。」
OK例:「輪番表作成時に『辞退が出た場合は次点の住戸へ自動的に繰り上げる』というルールをあらかじめ定めておいたことで、辞退の申し出から数日で次の候補者への打診が完了した。」
輪番で選ばれた理事長の役割については、「マンション理事長の仕事と役割」もあわせてご覧ください。理事会全体の1年間の流れは「マンション理事会の役割と年間スケジュール」で解説しています。
輪番制をうまく運用している管理組合の共通点
輪番制がスムーズに機能している管理組合には、いくつかの共通点があります。第一に、順番の基準・対象範囲・免除条件が規約や細則に明文化されており、担当理事が交代しても同じ基準で判断できることです。第二に、輪番表そのものが誰でも確認できる形で共有されており、「次は誰の番か」が特定の理事だけでなく居住者全体に見える状態になっていることです。第三に、就任する理事の業務負担そのものが小さくなるよう、議事録のテンプレート化や連絡業務のデジタル化といった工夫が積み重ねられていることです。輪番制は仕組みだけを整えても、実際の業務負担が重いままでは形骸化しやすいため、選び方のルールと業務の効率化を両輪で進めることが大切です。
よくある質問
輪番の順番はいつ決めればよいですか?
決まったタイミングはありませんが、多くの管理組合では管理組合設立時や、大規模な住戸売買・入居が落ち着いたタイミングで輪番表を作成し、以後は総会や理事会で定期的に更新しています。
賃貸に出している住戸はどう扱いますか?
区分所有者本人(オーナー)が対象になるのが基本ですが、管理規約で賃借人の就任を認めている組合もあります。トラブルを避けるため、対象範囲は規約や細則で明文化しておくことが望ましいです。
高齢の方や単身者への配慮は必要ですか?
年齢や世帯構成だけを理由に一律で対象から除外すると、公平性の面で疑問が生じることがあります。免除の可否は、年齢そのものではなく、健康状態や業務遂行の可否といった正当事由の基準に沿って個別に判断するのが実務上一般的です。
輪番を拒否したらどうなりますか?
規約上、正当な事由がなければ辞退が認められないケースもあります。辞退したいときの考え方や伝え方は「マンションの理事を断りたいとき — 辞退の可否と伝え方」で詳しく解説しています。
立候補制と輪番制を併用できますか?
可能です。基本は輪番で決めつつ、意欲のある区分所有者からの立候補があれば優先的に受け入れるという運用は、多くの管理組合で実際に行われています。
1人世帯や単身者は対象から外してよいですか?
世帯構成だけを理由に一律で対象から外すのは、公平性の観点から慎重な判断が求められます。業務量が負担であれば、対象から外すのではなく、役割分担を工夫して負担の軽い役職を担ってもらうといった調整も選択肢になります。
輪番表は誰が管理すればよいですか?
理事長や書記が管理するケースが一般的ですが、担当者が交代するたびに引き継ぎが必要になります。特定の個人に依存しない形で、クラウド上に輪番表と関連資料をまとめて保管しておくと、担当が変わっても迷わず参照できます。
まとめ
輪番制は公平に役員を決められる一方、順番の単位・対象範囲・免除ルールを事前に明文化しておかないと運用でつまずきます。ルール整備とあわせて、引き継ぎ資料の保管や連絡業務のデジタル化で役員の負担そのものを軽くしておけば、輪番が回ってきたときの不安も和らぎます。輪番表・議事録・免除の運用ルールをまとめて一元管理しておくことが、長期的にトラブルの少ない管理組合運営につながります。
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