持ち回り決議とは|マンション理事会の書面決議の対象とやり方
公開日: 2026-07-11 / 更新日: 2026-11-08
持ち回り決議とは、理事が一堂に会する会議を開かずに、担当者が理事を順に訪ねる、またはメール等で議案を回して賛否の了承を得ていく意思決定の方法です。書面で回付する場合は「書面決議」とも呼ばれます。理事全員の予定を合わせて集まるのが難しい、急ぎで決めなければならない事項がある――そんなときに使われます。
※国土交通省のマンション標準管理規約を基に解説しますが、これはあくまでモデル規約であり法的拘束力はありません。実際の対象事項・要件は各マンションの管理規約の定めによるため、運用にあたっては自組合の規約を確認のうえ、必要に応じて管理会社・専門家にご相談ください。
持ち回り決議・書面決議とは
理事会の決議は、本来、理事の半数以上が出席する会議を開いて行うのが原則です(標準管理規約第53条1項)。持ち回り決議・書面決議は、この会議を開かずに、書面または電磁的方法(メール等)で議案への賛否を確認し、決議があったものとする方法を指します。
- 書面決議:議案を記載した書面を理事に回付し、賛否を記入・押印してもらう方法
- 持ち回り決議:担当者が理事を順に訪ねる、またはメール等で議案を回し、了承を得ていく方法
規約上はどちらも同じ「書面又は電磁的方法による決議」として扱われ、呼び方が違うだけで手続きの性質は共通しています。
総会の決議の省略との違い・根拠となる規定
マンションの「決議の省略」には、総会(集会)のものと理事会のものの2種類があり、根拠と要件が異なります。
- 総会の決議の省略:区分所有法45条に基づき、議決権を有する区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意があれば、集会の決議があったものとみなされます
- 理事会の持ち回り決議・書面決議:区分所有法に直接の規定はなく、多くの管理組合が採用する標準管理規約第53条2項に基づき、理事の過半数の承諾があれば、特定の議案(次項)について書面・電磁的方法による決議ができるとされています
総会は「全員の合意」、理事会は「過半数の承諾」が標準管理規約の原則で、要件が異なる点に注意してください。
持ち回り決議・書面決議にできる議案
標準管理規約第53条2項は、対象を第54条1項5号に掲げる事項に限定しています。これは第17条(専有部分の修繕等の申請に対する承認・不承認)、第21条(敷地及び共用部分等の管理)、第22条(窓ガラス等の改良)に定める承認・不承認です。同規約のコメントでは、この限定の理由を「申請数が多いことが想定され、かつ、迅速な審査を要するものであることから」としています。
つまり標準管理規約がベースの場合、予算・決算案、規約改正案、長期修繕計画案といった理事会で議論を尽くすべき一般的な議案は、持ち回り決議・書面決議の対象に含まれていません。これらは原則どおり、理事が集まる会議で決議する必要があります。
ただし、これは国のモデル規約の内容であり、マンションによっては独自の管理規約で対象を広げ、緊急時に限り議案を限定せず書面決議を認めている場合もあります。まず自組合の管理規約に、理事会の書面決議・持ち回り決議に関する規定があるか、あるとすればどの議案が対象かを確認しましょう。
どんな時に使うか
- 専有部分の修繕・窓ガラス改良等、規約で対象に含まれる個別の承認・不承認で、台風・災害対応など緊急に決定が必要な場合
- 自組合の規約で対象が広げられており、理事の予定が合わず通常の理事会開催が難しい時期の議案
- 議案の内容が単純明快で、議論より承認のスピードを優先したい場合
一方で、意見交換や調整が必要な議案(対立が予想される案件など)は、規約上対象にできる場合でも書面決議には不向きです。実際に集まって議論すべき内容かどうかを見極めることが大切です。理事会の一般的な進め方は「マンション理事会の進め方」、オンラインでの開催は「マンション理事会をオンラインで開催する方法」も参考にしてください。
進め方の基本手順
- 対象議案かを確認する:自組合の管理規約で、その議案が持ち回り決議・書面決議の対象になっているかを確認します
- 議案書を作成する:決議したい内容・理由・期限を明確に記載します
- 理事全員に回付する:書面(または電磁的方法)で、全理事に議案書を届けます
- 賛否の確認・記録:理事から賛否の意思表示(署名・押印、またはメール等での回答)を得て記録します。標準管理規約第53条2項は「理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる」としており、過半数の承諾はこの方法を選べる要件です
- 結果を議事録として残す:通常の理事会と同様に、決議の内容・結果を記録として残します(標準管理規約第53条4項)
過半数の承諾が得られない場合は、書面・電磁的方法による決議によることはできません。その場合は通常どおり理事会を開催して協議します。
議案書・回答書の文例
理事会 持ち回り決議 議案書
議案:〇〇様(〇号室)からの専有部分修繕工事申請の承認について
内容:〇〇の工事につき、管理規約第〇条に基づき申請がありました。工事内容・期間は別紙のとおりです。
回答期限:〇月〇日
回答方法:本書面に賛否を記入・押印のうえ理事長までご提出、またはメールにてご回答ください。
〇〇マンション管理組合 理事長
回答書(書面決議用)
議案:(議案書記載のとおり)
回答:□ 賛成 □ 反対 □ 保留
〇号室 理事 氏名: 印
記録を残すことの重要性
持ち回り決議・書面決議は実際に集まらない分、後から「言った・言わない」の食い違いが起きやすいという側面があります。誰が・いつ・どの議案に・どう回答したかを明確に記録し、理事会の議事録と同様に保管しておくことが大切です。紙のやり取りだと記録がバラバラになりがちですが、電子的に記録を一元管理しておけば、経緯の確認や理事交代時の引き継ぎがスムーズになります。
よくある質問
Q. 持ち回り決議とは何ですか?
A. 理事会の議案を、理事が一堂に会する会議を開かずに、書面またはメール等の電磁的方法で回付し、各理事の賛否を確認して決議したものとする方法です。担当者が理事を順に訪ねて了承を得る進め方を指して使われることが多い呼び方で、規約上の用語としては「書面又は電磁的方法による決議」にあたります。
Q. 理事会の持ち回り決議は理事全員の同意が必要ですか?
A. 標準管理規約第53条2項は「理事の過半数の承諾」を要件としており、全員の同意までは求めていません。これは区分所有者全員の承諾を要する総会の決議の省略(区分所有法45条)とは異なります。ただし、これはあくまでモデル規約の規定であり、実際の要件は各マンションの管理規約の定めによります。
Q. 持ち回り決議・書面決議の対象にできる議案に制限はありますか?
A. 標準管理規約では、第54条1項5号の事項(専有部分の修繕等の申請に対する承認・不承認など、規約が定める個別の承認・不承認)に限定されています。予算・決算案や規約改正案など、理事会で議論を尽くすべき一般的な議案は、標準管理規約上は対象に含まれていません。ただし、各マンションの管理規約で対象を独自に広げている場合もあるため、まず自組合の規約を確認してください。
Q. 持ち回り決議の記録はどう残せばよいですか?
A. 誰が・いつ・どの議案に・どう回答したかを明確に記録し、通常の理事会議事録と同様に保管します。標準管理規約第53条4項は、理事会の議事録について総会の議事録に関する規定(第49条)を準用すると定めており、書面決議の場合もこの規定に従って記録・保管します。
まとめ
- 持ち回り決議・書面決議は、理事が集まる会議を開かずに意思決定する方法。書面で回付する場合を特に「書面決議」と呼ぶ
- 標準管理規約では理事の過半数の承諾があれば書面・電磁的方法による決議ができ、対象は専有部分の工事承認等(第54条1項5号)に限定される。一般的な議案は対象外(実際の規約は組合ごとに確認)
- 対象議案の確認→議案書の作成→回付→賛否確認→記録という手順で進める
- 記録を一元管理しておくと、後の確認・引き継ぎが楽になる
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